翻訳レートをクライアントと交渉するためにした前準備4選と交渉手順

英語

現在、主に翻訳 (英→日) と通訳、ITの仕事をしていますが、今回は翻訳レート (ワード単価) 交渉について書いています。

ある金融系のクライアントから翻訳の仕事を受注するようになって1年と半年ほどが経過しました。

そろそろ翻訳レートを上げてもらう交渉をしようと思い立ち、1ヵ月をかけて準備をし、レートを上げてもらうことに成功しましたので、経緯と手順を詳しく紹介した記事にしました。

具体的なレートは伏せて公開していますが、一翻訳者の事例として参考にしていただければ幸いです。

翻訳レートUPの交渉をしようと思ったきっかけ

きっかけとしては、2つあります。

1. 翻訳に関する本を読んだ

7月20日頃から、一日一冊を目標に読書することを始め、翻訳に関する本を読み漁っていました。

(Amazon Kindleを利用しています。)

翻訳のレート (料金) の参考情報として書かれていた、日本翻訳連盟の「翻訳料金(クライアント企業の翻訳発注価格)の目安」を見たところ、愕然としました。

そのときの私のレートと、だいぶかけ離れていたためです。

後からよく見ると、「クライアント企業が翻訳会社に初めて翻訳を依頼される場合の翻訳料金(翻訳発注価格)の目安」とあるので、翻訳会社に対する料金であって、フリーランスに対する料金ではないのですが、その時は、金額ばかりを注目していました。

日本翻訳連盟による、翻訳料金(クライアント企業の翻訳発注価格)の目安
日本翻訳連盟による、翻訳料金(クライアント企業の翻訳発注価格)の目安 参照URL:https://www.jtf.jp/tips/price

その時に読んだ書籍は、以下のブログ記事 (翻訳関連で最近読んだ書籍7選|特に役立ったのはWordのコツ)で紹介している本のどれかです。(どれだったかは失念しました。)

2. 翻訳の依頼が減ってきた

2021年5月がそれまでで一番忙しく、約26,000ワードの翻訳をしていました。その2ヵ月後の7月は、激減して約6,000ワードでした。

最低発注ワード数が保証されているわけでもないので、これはワード単価を上げるか、クライアントを増やすか、どちらかしかない、という考えに至ったわけです。

ワード単価を上げるのと、クライアントを増やすのは、それぞれ並行して行うことができるので、まずはワード単価の交渉に着手しようと考えました。

最初のレートの設定

交渉前のレートは、1ワードあたり0.1*ドルでした。小数第2位は伏せますが、0.1ドル台前半です。

これはトライアルを通過して、採用の通知を受け取り、クライアントから「あなたのレートはいくらか?」と質問をされて、慌ててグーグルで検索をしまくって調べて出した結果です。

丸1日くらい、レートの調査・検討にかけても良かったのに、早く回答しなければと焦って返信したのが後々に後悔することとなりました。

フリーランスになって初めての長期契約の見込まれる翻訳クライアントだったので、遅い返信によって逃してはいけないと焦っていたのでした。

翻訳レートの相場

検索をして相場を調べた

あらためて、色々なサイトを見てみると、私の設定したレートは平均より低すぎるでもなく、高すぎるでもないレートだったように思います。

ProZ.com

例えば、ProZ.comのサイトから、[Average rates charged for translations] を見てみると、Avg. rates per wordの標準が0.12USD/wd、最低が0.09USD/wdということがわかります。

Average rates reported by language pair 参照URL: https://search.proz.com/?sp=pfe/rates
Average rates reported by language pair 参照URL: https://search.proz.com/?sp=pfe/rates

gengo

他にも、翻訳サービスを提供している株式会社Gengoによれば、標準レベルは0.06ドル/wd、上級レベルだと0.12ドル/wdということがわかります。

Pricing and languages 参照URL: https://gengo.com/pricing-languages/
Pricing and languages 参照URL: https://gengo.com/pricing-languages/

また、Gengoの注文ページから英日で試しに発注してみようとすると、英日の場合は、0.08ドル/wdからということが分かります。これは、発注する側から見た価格ですので、翻訳者が受け取る金額はこれより少なくなるでしょう。

慌てて設定したワード単価でしたが、とりわけ低いものではなさそうだということが分かりました。

ただ、私は会社員としてのバックグラウンドと翻訳品質にそこそこ自信があったので、現在のレートよりも、もう少し上でもいいのではないかと感じていました。(自意識過剰でもいいのです。)

米ドルで受け取るか日本円で受け取るか

米ドルで受け取るか日本円で受け取るか
米ドルで受け取るか日本円で受け取るか

レートの話とは少しずれますが、クライアントからワード単価を質問されたときに、何ドルかという質問の仕方だったので、てっきり受取りは米ドル指定なのかと思っていました。

ところが後からよくよく話をしてみると、日本円の指定でもよかったようなのです。

日本円なら為替の影響を受けずに受け取ることができますが、米ドルの場合だと、為替の影響をもろに受けます。

2020年後半は、年末に向かうにつれて円高傾向が強まっていたため、泣く泣く1ドル=103円台のときに、日本円に出金していました。

一方、2021年夏現在は、円安の傾向が強く1ドル=110円あたりを推移しているため、2020年末のときほど、為替に気を揉むことなく、出金するタイミングを窺っています。

円安のときは米ドルで受け取りたいですが、円高のときは日本円で受け取りたくなりますね。

が、受取り通貨をコロコロ変えるわけにもいかないので、米ドルのままにしていますが、昔よりもドル円の為替レートの動きには敏感になりました。

翻訳レートUpのための準備

レートUPに相応しいと判断してもらうために、それまでにも増して、以下の点に注意しながら翻訳作業を進めました。

このクライアントの翻訳作業では、プロジェクト管理用のWebベースのツールを利用しているため、各翻訳プロジェクトにおいて、アサインされている各国言語の翻訳者、原文ファイル、納品物、QAなどのやり取りを含むすべてを、サイト上にて確認することができます。

それを前提に、以下を読み進めていただければと思います。

1. 必要なUIの確認、質問を怠らない

クライアントから用語集は事前に受け取っていますが、更新頻度が低く、必要なものが載っていないことが多々あります。

そのため、逐一、当該プロジェクトページ上で、納品時もしくはそれに先立って、必要なUIについてや、不明点を担当者に確認します。

これは特定の言語に限ったことではないので、なるべく早く問い合わせることで、他の翻訳者も参照でき、同様の質問をしなくて済みますし、担当者は、UIなら必要な言語分すべて提供してくれるので、双方にとってメリットがあります。

2. 他の翻訳者を助ける

作業を始めて間もない頃、作業の仕方の勝手が分からず、担当者にメールで問い合わせたことがあります。

ちょうど運悪く、週末に入ったところで、担当者からの返信がすぐには期待できないところに、アラビア語の翻訳者から回答がもらえたことがありました。

私を助ける義務はないのに回答をくれたことに、さらに週末であることに、私はえらく感動しました。

それ以来、利他の精神でGiveを繰り返そうと誓ったのでした。

翻訳者たちは、私もそうですがフリーランスの人が多く、土日祝日関係なく作業していることがとても多いです。

クライアントは一企業ですので、週末に作業することは非常にまれなので、週明けの担当者からの回答を待つよりは、翻訳者同士、助け合えるところは助け合った方がお互い、ハッピーになれると考えます。

というわけで、自分が担当したプロジェクトで、他にも応用できる情報やUIに関するヒントがあったら積極的に他の翻訳者に共有する、ツールの使い方で困っている人がいたら、役立ちそうな手法を提案してみる、などといったことをやっています。

3. 参照したものを必ず明記する

クライアントのウェブサイトで参照したものがあれば、納品時に明記します。

当然と言えば当然ですが、納品後に社内で校正作業がある場合、校正する側からしたら必要な情報となるからです。

これについても、ある言語で参照できるものがあれば、多言語にも参照できるバージョンが存在している可能性が高いので、他翻訳者にとっても有益となると思っています。

4. なるべく早く、誰よりも早く納品

私は納期に遅れたことはこれまで一度もないのですが、できるだけ早く納品するように心がけています。

上記に挙げたように、納品とともに質問やUIの確認をすることがあり、それはクライアントにとっても、他の翻訳者にとっても有益な情報であるはずです。

プロジェクトサイト上で、納品は誰が早くて、誰が最後かは一目瞭然ですので、納品の早さを印象付けるためにも、遅くならないよう気を付けています。

翻訳レートUPのための交渉の手順

翻訳レートUPのための交渉の手順
翻訳レートUPのための交渉の手順

情報収集

まずはフリーランスがレートを上げてもらうためには、どうしたらいいのか、インターネット上で情報収集をしました。

このクライアントの場合、翻訳者とのミーティングが行われることはまれなので、メールが手段になることを前提に、メールにどういったことを記載すべきなのかを調べました。

たとえば、flexjobsのHow (and Why) to Raise Your Freelance Ratesの記事が役立つと思います。

他にも、How To Raise Your Freelance Rates So Clients Happily Say Yes To A Fee Increaseも参考になりそうです。

実際にメールを書くにあたって参照した記事は上記のいずれでもないのですが、内容としては似ているので参考になると思います。

自分が参照したものは、きちんと記録しておくのがよいですね。今後のためにも。

When: どのタイミングで出すか

夏期休暇や年末などで、クライアント側の担当者が不在の時期は避けるべきなのは当然ですが、クライアントから翻訳の仕事を受けるようになってから1年以上経過していたのと、翻訳プロジェクトが立て込んでいる時期ではなかったので、交渉するなら今だ!と考えました。

Who: 誰宛に交渉のメールを出すか

翻訳プロジェクトにおける担当者が複数いましたので、誰宛にレートの交渉についてのメールを送信するかを検討しました。

ポジションのタイトルだけでは、誰が翻訳者のレートに対して承認権限を持っているか判断がつきませんが、経験上この人なら話がスムーズに進むだろう、と当たりをつけました。

Why: 自分がクライアントにもたらしているメリットを説明

上記の翻訳レートUpのための準備で行なったことをベースに、私を翻訳者として使うことのメリットを挙げて説明しました。

日本企業が相手なら、こういったやり方は避けたと思いますが、今回の相手は米国企業なので、自分をどれだけ価値ある人間に見せるかに重点を置きました。

How: 目標の上げ率を考慮し、それの3割増しで交渉する

今回、目標の上げ率は15%だったのですが、そのまま提示するとそれより低くなるのではと考え、約3割増しの20%UPで依頼しました。

1年数ヵ月サービスを提供したくらいで、20%UPとは図々しいにも程があると言われそうですが、クライアントは1社だけではないので、これで却下ならそれでもいいや、と前向きに考えました。

翻訳レートUP交渉の結果

3週間後に返答

経理部との確認が必要だったそうで、3週間待ってやっと回答がありました。

10%UPが承認されました。

残念ながら目標の15%には届かず、でした。

追加で要望

少々不本意ではあったので、今回交渉したワード単価とは別に、追加の要望を出してみました。これはワード単価とは関係ないものですが、報酬には関連するものです。

すると、1週間後に、本契約の修正案とともに、AcceptするかRejectするか返信するようにとのメールが送られてきました。 追加の要望についての記載はなく、10%UPに関連する記載のみでした。

本契約の修正案にはその日の日付 (発効日) が明記されていましたが、このタイミングを逃すと、10%UPすらも水の泡になる恐れがあったので、即時サインをしてクローズとなりました。

追加の要望を出していなかったら、1週間前の発効日で本契約の修正が行われていたかもしれない (つまりその間に発生した翻訳作業が10%UPのレートになっていた)、と思うと切なく感じます。

なお、追加の要望については回答がないままですので、折を見て、担当者に聞いてみようと思っています。

まとめ

このクライアントの翻訳作業は、翻訳対象の原文が興味を持って読むことができる、つまり楽しく翻訳できるので、他のクライアントの作業よりも優先して行っています。

興味を持ってできる仕事なので、今後も続けていきたいですし、クライアントとの良好な関係を維持したいとも考えています。

一方で、やはり報酬のことも大事です。

慈善事業ではないので、翻訳というサービスを提供して、対価として報酬をいただいています。

レートUP後は、受注側としては、品質、スピードなどにおいて、さらに対価に見合うサービスを提供しようとしますし、発注側は対価に見合うサービスを要求するはずです。例えば、以前にもまして超短期での納品を求めたり、付随作業の発生する翻訳を依頼したりすることもあるでしょう。

ですので、双方がレートUPを前向きにとらえればよいと思うのです。

今回は、10%UPとなりました。自分のモチベーションが最も上がったのが、レートUPの依頼メールを出してから、承認上げ率の回答を受け取るまでの約3週間でしたが、フリーランスとしての仕事の進め方を考えるよい機会となりました。

当記事の一翻訳者としてレートを上げてもらうまでの準備や手順が、他のフリーランスの方の一助となれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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